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(無理むりむり)
悩む事も無く春翔が拒否したのは、仲間内にホストをしている者がおり、華やかに見えて大変な仕事であるという事を知っているからだけでは無い。女性が苦手であるので、女性を相手にする仕事ができる筈が無いという理由が大きい。
女性が苦手であるのは、周りから賛美される容姿のせいで幼い頃から女の子に取り合われ、怖い思いをして来たからだ。
春翔が女の子が苦手であるという事を、周りの人間は皆知っている。それなのに周りの人間が頻繁にそんな事を言って来るのは、V系ホストと言われる部類の格好を春翔が好んでいるからだろう。
そんな格好のせいで、繁華街の中を歩いているとホストに間違われる事が多い。
(あっ……!)
原付が前を走っていた車にぶつかろうとしていた。考え事をしながら原付に乗っていたせいで、いつの間にか前の車が停まっていた事に気が付かなかった。
(やべぇ!)
春翔は狼狽えながらブレーキを掛けたのだが、間に合わなかった。原付は前を走っていた車にぶつかる事になってしまった。
「……っ!」
目を瞑ると軽い衝撃を感じた。それだけで原付から落ちてしまう事が無かったのは、速度を出していなかったからだろう。
「あぶねーな! ちゃんと周り見て停まれよ!」
前の車が停止したのは赤信号になっていたからだ。車には何の過失も無いのだが、動揺して思わず車に乗っている相手を怒鳴りつけると、扉が開き車に乗っている者が中から降りて来た。
(はあ……?)
車からこちらにやって来ている二人の男の姿を見て、春翔は目を丸くした。
二人とも日本人では無かった。金色の髪と白い肌をした黒い背広に身を包みサングラスをした二人は、大柄であると共に体格が良かった。武術を極めていそうな男たちである。
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