01.

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(えっ……あっ……嘘だろ……)  全く予想もしていなかった男たちが車から出て来た事に狼狽していた時、ぶつかった車が高級車である事に春翔は気が付いた。 (やべ……ヤクザ?)  堅気はこんな車になど乗らない。それに、車から降りて来た男たちはどう見ても普通の人間では無い。  ヤクザの車にぶつかってしまったのだという事が分かった事により、やってしまった。車をぶつけられた事にやくざは怒っているのだ。このままでは殺されてしまう事になると思い怯えていると、立ち止まっている黒尽くめの男たちがこちらを見ながら何か話し始めた。  聞こえて来たのは日本語では無かった。英語であるのかもしれない。  高校時代、英語のテストでまともな点数を取った事が無いほど英語が苦手である。その為、何を言っているのかという事が分からないどころか、二人が喋っているのが英語であると言い切る事すらも春翔にはできなかった。  二人が何を話しているのかという事が分からず身構えていると、車の後部座席の扉が開き更に誰か出て来た。 (あっ……)  車から出て来た人物の姿を見て、春翔は目を丸くした。  最初に降りて来た二人の男たちと同様に、降りて来た人物は日本人では無かった。二人よりも細身ではあるのだが頼もしそうな体格をした長躯の男は、二人と同じように金色の髪と白い肌。そして、青空を思わせるような青い瞳をしていた。  先に降りて来た二人に目を奪われる事は無かったというのに彼の姿に春翔が釘付けになったのは、映画俳優でもしていそうな程整った容姿をしていたからだけでは無い。白い異国の服を着た男には、他者を圧倒し従わせるようなカリスマ性があったからだ。  そんな相手に無縁な生活を今まで送って来たので、こんな相手と出会ったのは初めてだ。 (アラビアンナイトみてえ……)  どこの国のものであるのかという事は分からないのだが、彼と似たような格好をした人物を昔読んだ絵本のアラビアンナイトの中で見た記憶がある。砂漠の国から彼は来たのかもしれない。 (ヤクザじゃ無くて……マフィア)
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