01.

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 砂漠の国にヤクザがいるという話しを聞いた事が無い。だがマフィアならばいそうであるので、彼らはマフィアであるのかもしれない。 (母さんに迷惑掛ける事になっちまう!)  母親が春翔を妊娠したのは、高校を卒業したばかりの十八歳の時である。春翔は、その当時付き合っていた恋人の子供だ。そんな父親は、子供ができたという事を母親から告げられた翌日、いなくなってしまったらしい。  恋人に逃げられ春翔を一人で産んだ母親は、キャバ嬢をしながら育ててくれた。母子家庭であるが今まで金に困った事が無いのは、母親が水商売で頑張って稼いでくれたおかげだ。もうこれ以上勉強をしたくないかったので断ったが、そんな母親は大学にも行かせてくれると言っていた。  今もまだ世話になっている母親に、これ以上迷惑を掛けたく無い。どうすれば良いのだろうかという事を混乱しながらも考えていると、春翔を見ると共に何故なのか分からないが喫驚するような様子へとなっていた異国の服を着た男が、目を眇めながら何か言った。  しかし、黒尽くめの男たちと同じように、彼が話したのもまた日本語では無かったので、何を言っているのかという事が分からなかった。  彼は春翔に対して何か言ったのだろう。何を言われたのかという事が分からず狼狽していると、彼は黒尽くめの男たちに何か言った。その言葉の意味も分からなかったので硬直したままでいると、返事をした男たちがこちらへとやって来た。 「えっ……あっ? えっ……」  二人の体格が良い男に挟まれ困惑から目を白黒させていると、春翔の腕を掴んだ二人が歩き出した。 「やっ……待て! ちょっ! えっ!」  二人が春翔を車に連れて行こうとしているのだという事に気が付き、大人しくしていては駄目であるという事に気が付きそれに抗った。しかし、見た目通り強靱な肉体をした男たちに逆らう事はできなかった。  車まで連れて行かれ、押し込めるようにして後部座席へと乗せられた。
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