第一章 お茶屋、再開しました。

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そういえば彼に言い忘れていたことがあったのを思い出した。 「あの……先ほどは突然泣き出したりしてすみませんでした」 「いや、あれは不可抗力というかなんというか……俺の方こそ泣いている君を放って帰ってしまって……その、申し訳ない」 「……」 (もしかして気にして戻って来たのかな?) この人には何も非がないというのに。寧ろみっともない醜態を晒した私が謝るべきだと思った。 「あの、もしよかったら中に入りませんか」 「え」 「もう昼食、食べました?」 「あ……いや、まだ」 「よかったら何か作ります」 「……」 その人は少し躊躇いがちな表情を見せたけれど、素直に私の後について店の中に入ってくれた。 「ピラフを作りますけどいいでしょうか?」 「ピラフ……そんな洒落たものを此処で食べられるとは」 「ふふっ、大袈裟です」 カウンター席に座ったその人は私が笑ったのにつられて口元を綻ばせた。 (う゛っ! 笑うと更にいい男になるんだ) 内心ドキッとした気持ちを押さえつつ、そういえばと先ほど気がついたことを口にした。
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