第一章 お茶屋、再開しました。

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扉につけている鈴がカランコロンと鳴り来客を知らせる。 「いらっしゃいませ」 「あれまぁ、本当にやってるんかいな」 「今日から始めました。どうぞよろしくお願いします」 「あんた、あれかい? 十喜代(ときよ)さんの」 「孫です。美野里といいます」 「みのりちゃんって……あの美野里ちゃんかい? ほれ、随分ちっこい時よぉく十喜代さんの処に来とった」 「はい。その美野里です」 「あんれまぁ! 随分おっきくなってまって。幾つになった?」 「今年25になります」 「あれあれ、そんなになったのかい。結婚して子どものひとりやふたりこさえたかね」 「いえ、それはまだ……」 「そんな別嬪さんで25にもなって結婚しとらんとはどうしたかね」 「えっと……25なので」 「いやいや、25といやぁこの辺じゃもう行き遅れの歳だね。えぇえぇ、わしらで世話してやるかい」 「ほうだな。あれ、あそこの……役場勤めの南さんとこの息子がえぇ歳じゃなかったかいな」 「いやいや、路線バスの運転手の北原くんがなぁ」 「……」 (なんだかいきなり盛り上がり始めちゃったなぁ) 来て早々のマシンガントークに面喰いながらも、お年寄りが集まり井戸端会議が始まったら長くなるとは祖母から訊いていた。
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