最終章 幸せな、未来来ました。

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信頼して愛情深く育ててくれた両親に申し訳ないという気持ちがあるから尚更金輪際一切関わりを持つことをしないと頑なに言っていた雄隆さん。 (でも……それでいいのかな) 私は常々そう思っていたのだけれど…… 「でも、よかったです。美野里さんのような女性が義姉になってくれて」 「え?」 「会ってからほんの数十分しか経っていませんがあなたの人となりを知れたような気がします」 「!」 「器量も気立てもいい。おまけに料理上手。お味噌汁は東藤家の味を思わせる風味」 「あ……それは雄隆さんからこういう感じでとリクエストしてくれたのを訊いて試行錯誤して……最近になってようやく好みの味になったといってもらえました」 「そうですか。兄は母の味を覚えていたんですね」 「お母さんの?」 「はい。いただいたお味噌汁の味は僕の母が作る味そのものでした」 「……」 (雄隆さん……) 遠回しに馴染んだ味を私に教えてくれたのだと思うとなんだか胸が熱くなった。 雄隆さんは決して実家のご両親の事が嫌いじゃない。 今だって忘れずにちゃんと想っているのだということが分かった。 「僕は両親の分まで兄のこと、美野里さんのことを見て来るようにといわれ此処に来ました」 「そうだったんですか」 その言葉を訊いて、東藤さんと実家の繋がりはこれからも途切れずに細く長く続いて行くのではないかと思った。
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