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コーヒーを淹れながら簡単に悟流さんとの話を蘭さんに話して訊かせた。
話し終えると蘭さんは益々安心したように表情を崩しひとつため息をついた。
「そっか……じゃあ先生のご実家は美野里ちゃんとの結婚を反対している訳じゃないのね」
「えぇ、そうみたいです」
「それならよかった」
「……」
蘭さんの呟くような言葉がやけに気になってしまった。
「あの、蘭さんは何をそんなに心配していたんですか?」
「え? ──あー……まぁ色々と、ね」
「色々って?」
「……」
その瞬間、また表情を曇らせた蘭さんに心配する何かあるのだと確信した。
「大したことじゃないのよ」
「大したことじゃないなら余計教えてください」
「……」
食い下がる私に蘭さんは観念したように両手を軽く上げる仕草をした。
「あのね、気にしないでね? もう終わったことだから」
「はい」
「実は数年前、一時期先生のご実家からしつこく縁談話が舞い込んでいたの」
「……は?」
「どうやってこの場所を特定したか知らないけれど、ご実家の使いという人が頻繁に来ていて実家で決めた結婚相手との見合い話を先生に持ちかけていたの」
「……お見合い」
それは初耳な情報だった。
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