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「勿論先生は一蹴したわよ。すごく激昂してね。そのことでまたご実家との関係が悪化した訳だけど、まぁご両親としては何とか先生との接点を持とうと必死だったんでしょうね。結局はそんな茶番も裏目に出てしまったけれど」
「そんなことがあったんですか……」
「えぇ。だからね、先生が突然結婚したと知ったご実家からわざわざ悟流さんが美野里ちゃんに会いに来たと知って慌てて駆け込んで来たの」
「蘭さんはどうして悟流さんが此処に来たって知ったんですか?」
「分かるわよ! あーんなデカい黒塗りの車がお店付近に停まっていたらまさか! って。あの数年前の再来かと思っちゃったの」
「……なるほど」
確かに悟流さんを乗せて行った車はこの田舎町では滅多に見ない高級車だ。
(……ということは雄隆さんの耳にも入っちゃうかな)
出来れば悟流さんが来たことは黙っていようと思った私の思惑は暗礁に乗り上げそうだった。
そして蘭さんの話を訊きながら以前から思っていたことがあり、それを今訊ねてみようと思った。
「それにしても蘭さんは雄隆さんのこと、とても詳しいですね」
「え」
「前々から思っていたんですけど、蘭さんと雄隆さんってかなり親しい仲だったりしますか?」
「……」
「もしかしておばあちゃんを通して知り合う前からとても深い関係だったんじゃ──」
「ちょっと待って!」
「!」
突然蘭さんの掌が私の口元を覆った。
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