最終章 幸せな、未来来ました。

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(蘭さんって不思議な人) こんなに美人で性格がよくて大人の色気満載の完璧な人が何故私なんかを構ってくれるのだろうとずっと思っていた。 そこに祖母の影響があったとしても思う以上によくしてもらっているのだ。 「あのね、わたしの本当の名前、蘭じゃないの」 「──え」 考え事をしていた頭に蘭さんの甘い声が響いた。 「わたしの本当の名前は山本椿(やまもとつばき)っていうの」 「山本……椿さん?」 「えぇ。でも出来ればこれからも蘭って呼んで欲しいわ」 「?」 それはどうしてだろうと思った。 (本名とは違う名前でいるのは何故?) そんな私の疑問を察したかのように蘭さんは蘭さん自身の身の上話、そして雄隆さんとの関係を話してくれた。 (蘭さんにそんな壮絶な過去があっただなんて……) 訊かされた蘭さんの過去が思った以上に衝撃的で思わず絶句してしまった。 「ちょっとちょっと美野里ちゃん、そんな顔しないの」 「……だって」 私は今まで自分以上に不幸な人間はいないと思って来た。そう思い込んで来た。 だけどこんな身近に私と同じく男性で苦しめられた女性がいたことに驚き、そしてなんとなく──安堵した。 私だけじゃない、私の気持ちを分かってくれる存在が傍にいるという事実に心が軽くなったのだ
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