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「ただいま帰りました」
「おかえり。お疲れ様」
「雄隆さんこそお疲れ様です。どうですか、執筆はかどりました?」
言葉を交わしながら雄隆さんの傍に寄ると不意に手を取られた。
クンッと引かれ、そのまま雄隆さんの腕の中に体が収まった。
「まぁまぁ、それより」
先刻までペンが握られていた雄隆さんの右手が忙しなく私の服を乱し始めた。
「ちょ、ちょっと雄隆さん」
「十時間ぶりの美野里を堪能させて」
「もう、何いってるんですか。私はこれから晩ご飯の支度をしなくちゃいけません」
「終わってからでいいよ」
「終わってからって……いつもそういって晩ご飯の時間が遅くなるんですよ」
「なんだ、今日はやけに反抗するな」
「反抗って……別に嫌じゃ、ないですけど……」
「じゃあいいじゃないか」
いつの間にか畳に押し倒されていつものペースに持ち込まれそうになる。
(嫌じゃないけど今日は)
昼間から考えていた計画を早く実行したくていつもの流れを中断させた。
「雄隆さん、今日は先にご飯、食べましょう」
「何だ、今日に限って」
「それは後で分かりますから」
「……」
「あの、一応いっておきますけど雄隆さんに抱かれるのが嫌って訳じゃないですからね」
「……」
「ご飯を食べたら……その後はもう好きにしていいですから」
「その言葉、忘れないように」
「はい……」
不貞腐れた表情から一転、何か悪巧みを考え付いたように口の端を少し吊り上げ雄隆さんは私の上から退いてそのまま手を取って起き上がらせてくれた。
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