最終章 幸せな、未来来ました。

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雄隆さんとの安穏とした結婚生活が半年を過ぎる頃になると、常連さん数人から『そろそろ子どもが出来たか?』なんて会話が出るようになった。 それは結婚した者へ向けられるにはごく当たり前の会話なのだろうけれど、私にとっては少々辛い言葉でもあった。 (子ども……か) 勿論雄隆さんとの子どもは欲しいと思っている。 おそらく雄隆さんも直接声に出してはいわないけれど子どもが出来れば嬉しいのだろうと思う。 それは日々の生活の中で不意に見せる雄隆さんの言動や仕草で感じるもので、雄隆さんは子どもが出来ればきっといいお父さんになるだろう。 でも私のことを気遣っているのか、雄隆さんに抱かれる時はいつも避妊されていた。 私がそれを強要したわけでもなくごく自然に、最初から当たり前のようにゴムを付けてくれていた。 (そういう気遣い、本当嬉しい) 本音をいえば妊娠が怖い。相手が違うだけで出来た子どもを生かしたり殺したりする私自身に嫌気が差すこともある。 そうして気持ちが落ち込むとやっぱり私は母親になってはいけないんじゃないかと思ったりした。
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