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「私に言っておかなければならないことはありませんか?」
「すまない、君が何をいっているのか皆目見当が──」
「仕事で東京に行った日のことです」
「………」
「覚えていますよね? ふたりで初めて行った東京」
「───!」
そこまで言ってようやく思い当たることがあったというような顔をした。そして呟くように「バレたか」と吐き捨てた。
「何がバレたか、ですか! どうしてあんなことをしたんですか?!」
「あーちょっと待て。その前に君はその情報をどうやって知った」
「芽衣子から先刻訊きました。芽衣子の上司である有城さんって人が飲み会の席で芽衣子だけにいい話としてこそっと漏らしたそうです」
「素面でか」
「いえ、相当酔っていたと言っていましたが」
「はぁー……やっぱり酒は怖いな。だから俺は酒を飲まない」
「私がお酒に関してのことをいえた義理じゃありませんが、それはひとまず置いといて、なんで私を盗撮したんですか!」
「盗撮とは言葉が悪い。隠し撮りだ」
「同じ意味です! まさか雄隆さんがそんな恥ずかしい事をしていただなんて信じられない!」
そう、お互いの仕事のためにふたりで東京へ行ったあの日、雄隆さんは私の仕事風景を担当編集者の有城さんに隠し撮りするように頼んでいたというのだ。
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