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向かい合ってしばらくただ見つめ合う時間が過ぎた。
(どうしたんだろう?)
こんな雰囲気を醸し出す雄隆さんは初めてで少し不安な気持ちになって来た。
そしてそんな私の気持ちが顔に表れたのか、雄隆さんはそれを敏感に感じ取ったようだ。
「美野里」
「っ、はい」
「──これを」
雄隆さんは後ろから何かを取り出し私の前に差し出した。それを手に取り視線を落とす。
「!」
一瞬、時が止まったように感じた。
「まだ完全版じゃなくて申し訳ないが、概ね完成に近い形になったので真っ先に君に見てもらいたかった」
「雄隆さん……これって」
「以前、君がいってくれたことが忘れられなくて」
「私がいったこと?」
それは一体なんだっただろうと首を傾げる。
だけど今、手に取っているものと雄隆さんの言葉を組み合わせると、雄隆さんが私にしてくれたことの大きさに気が付き、気が付けば大粒の涙を流してしまっていた。
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