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「雄隆さん、ありがとうございます」
手渡された本を両腕でギュッと抱き締めながらお礼を言った。
「書店に並ぶ形になったらもう一度贈る」
「ありがとうございます。……本当に……嬉しい」
「! おい、泣くな」
「だって……こんな嬉しいことっって……」
胸が詰まってしまって嬉しいのに涙がぽろぽろと零れて止まらない。
「そこまで喜んでもらえるとは思わなかった」
「……あの……雄隆さん」
「ん?」
少し落ち着いたところで私はおずおずとお願いを口にした。
「もしよかったらサイン、してもらえませんか?」
「──は?」
「此処に……『美野里さんへ』って書いて隆成然先生のサインを是非」
「……」
「ダメ、ですか?」
「……君は本当に俺の想像の斜め上を行くな」
「え?……───っ!」
突然雄隆さんの腕が伸びて来て私の体を引き寄せた。
「君は俺が好きなのか? それとも隆成然か?」
「?!」
「隆成然と口にする度に顔を赤らめるな」
「あ、赤らめてなんか──」
「いる。俺が妬けるほどに」
「そんな……隆成然先生も雄隆さんじゃないですか」
「それでも気にくわない」
「……」
そんなことを言いながらその逞しい両腕で私の体をすっぽりと包み込んだ雄隆さんは私の頭に顎を乗せながらすりすりした。
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