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「凄いな、休憩になってすぐに来たんだ」
「車飛ばして来た。絶対美野里さんの処に行っているだろうと思ったから食事を摂るのも惜しんで速攻やって来た」
「なんだそりゃ。どんな心配してんだか」
「するに決まっているよ! 油断も隙もないって慣用句は幸兄のためにあるようなものなんだから」
「あはは、なんだよそりゃ」
南さんと幸一郎さんの兄弟特有の会話を訊きながら私はというと(結局東藤さん、来なかったな)なんて考えていた。
「美野里さん、すみませんがサンドイッチ注文してもいいですか」
「……え」
「昼食がまだなのでお願いします」
「……あ、はい!」
ボーッと考えごとをしていた頭に南さんの言葉が入って来て慌てた。
「お、美野里ちゃんの作るサンドイッチか。いいな、俺にも作って」
「追加注文ですね」
「ははっ、勿論。ちゃんとお代は払うよ」
「少々お待ちください」
頭を切り替えて受けた注文の調理に取り掛かった。
その間、目の前のカウンター席では南さんと幸一郎さんが愉しげな会話を繰り広げていた。
それを半分訊きながらやっぱり頭の中では(どうしたんだろう、東藤さん)なんて考えていた。
食事を終えた南さんは役場に戻るために13時前にお店を出た。
ついでとばかりに『美野里さんの迷惑になるから幸兄も帰ること! 家まで乗せて行くから』と言って幸一郎さんを連れて帰って行ったのだった。
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