Prelude ~池崎馨の夢 Ⅰ~

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 ここは楽しい夢の国、ルシアナ王国。  犬の姿をした妖精たちが穏やかに幸せに暮らしている世界なんだ。  そして僕はこの国の王子、カヲル。  スラリと伸びた手足、白くて長い柔らかな被毛。  気高く優雅なボルゾイの血筋が王族の証だ。  今日は天気が良いので、護衛のドーベルマンを連れて、お忍びで森へ散歩にきているんだ。  ああ、それにしても今日もこの国は美しい。  芳しき花の香りがそよ風にのって運ばれてくる。  少し歩いた先にある湖のほとりで読書でもするとしよう── 「カヲル王子!」  えっ? 誰!?  護衛が剣を抜くよりも早く、僕の懐に何者かが飛び込んできた! 「き、君は……!?」  顔を上げたその娘は、カフェオレ色カラーのトイプードル。 「ココと申します! 以前この森で王子のことをお見かけしてから……ずっと王子のお姿が頭から離れませんでしたっ」  ココという娘は僕の白く豊かな胸毛に顔を埋めてくる。 「君……! 離れないか! 僕には隣国のアイナ姫という想い人が……!」 「もふもふ……せめてもふもふだけさせてくださいっ! 私、王子にもふもふすることが夢だったのです!!」 「ちょ! 君!!」 「離れろ! 娘! 王子に無礼ではないか!!」 「もふもふ~~~!!!」  ────  ──…  ……
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