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二章 五幕 帰還報告
(これからもよろしく、って何だよなっていうな……)
リユニア公爵にでも聞かれていたら盛大に噴出された上で散々揶揄われる浪漫の欠片もない台詞だったと我ながらにへこむ。
明日には発つ宿の寝室で、一人ゴロゴロと悶え転がっているシャイアだったが、ふと昼の事を思い出す。
目を瞑れ、と言われたから瞑った。そして開いた時には、恐ろしい惨状があった。
(……だけど、怖くはなかったんだよなぁ……)
アッガーラが怖れていたのは分かった。あの後、軽く声を掛けておいたが、王宮に帰ってからバルクとだけでも話しておいた方が良いだろうと思い直す。
目の前で技を振るったという事は、ナタリアはバルク達には話してもいいと判断したのだろう。誰か一人でも薄目を開けていれば悲鳴が上がったに違いない。これはナタリアにも確認してからの方がいい事か、と悶々と考え込む。
(確かに、普通は恐ろしいと思うものなのだろうなぁ……)
『恐ろしいと思わずにいてくださいませ――』
ナタリアの声が、微かに震えていたことを思い出す。
彼女は『そういう者』だ。力を持つ、自分で言うように意思持つ武器なのであろう。
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