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誰が膝を折らずにいられようか。対してシャイアには目しかない……、と、彼は思うのだ。
「何でもないよ。ロダスを呼んで適当な理由で斥候を放とう。ついでにバルク殿への伝令も出さねばな」
しかし、シャイアは未だナタリアの事を誤解していた。
ナタリア率いる御庭番が技を振るうのは、誰かの為なのだ。誰かに従う事で強くあり、誰かに仕える事で力を発揮する。強い指針が必要であり、そうでなければ海原に浮かぶ小舟と同じ。
その強い指針が自分である事を、シャイアは理解していない。
「シャイア様……」
ナタリアはそれを伝えようとしたが、今は山の様な問題が目の前にある。
「私がロダス様をお呼び致しますわ。少しお休みくださいませ」
「ありがとう」
ナタリアは開きかけた口を閉じて、執務室を後にした。
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