1人が本棚に入れています
本棚に追加
領主が新しいもの好きというのは本当で、街の中には劇場やシャイア達が泊まれるような高級宿場、その隣に八百屋があるかと思えば通りを挟んで向かいには宝飾店がある。街角には吟遊詩人と娼婦が通りを挟んでそれぞれ客引きをしていた。
賑わってはいるのだが、どこか退廃的で雑然とした様に、シャイアは最初あんぐりとした。一年前、直轄地を視察に来た時にはこんな街では無かったはずだ。そもそも、見えるところに警吏の一人も立っていない。
「あぁ、やっと着きましたわ。王妃様はお疲れではございません?」
馬車での長距離移動は初めてだったのだろう。シャイアに次いで続々と馬車を降りた面々の中でも、最初に動き始めたのは疲れた顔のローザだった。小間使いに宿へ荷物を運ばせながらナタリアに尋ねた。
「えぇ、私は慣れてますから。ローザこそ少し顔色が悪いわ、今日はもう休んで頂戴。晩餐の時にはまた呼びに行かせるわ」
「いえ、でも……」
「私たちは慣れていますから、本当に大丈夫よ。明日からまた美味しいお茶を淹れてくださる?」
「はい。では、お言葉に甘えて今日は下がらせていただきます」
「リァンはもう少し貸しておいてちょうだいね」
「お、王妃様……!」
「冗談よ。部屋は別ですものね。ではまた明日ね」
最初のコメントを投稿しよう!