二章 三幕 貧民街

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「お手伝い致します」  笑顔を取り戻したシャイアが愛嬌たっぷりに片目をつむると、ナタリアは嬉しそうに笑い返し、そして片手を差し出してきた。こうして変装をすると普通に表情が表に出るらしい。 「シャイア様、今の私たちは傍目には商家の息子と使用人です。普通の恋人同士です」 「可愛い事を言うなぁ」  今もカレンの膝蹴りが暴漢の顔面を抉り、ニシナの手刀が強盗の意識を奪っていたが、それはそれこれはこれである。  悪臭漂う貧民街の前で二人は仲良く手を繋ぐと、宿屋へと帰っていった。 「いま、なんと……?」 「二度目だぞ。爵位と領地を没収する。借金は肩代わりしてやるが、貴様には東の開墾に一農民として加わってもらう」  蒼白になった顔でブルブルと震えだしたのがザナス辺境伯である。  彼は突然の王の到着から既に、落ち着かない様子だった。シャイアも気付いているだろう。この辺境伯は()()()()()()()()()()()。  文明から一番遠いところに置いておかなければダメだ。今震えているのは急すぎる対応にだろうが、バレ無いと思っていたのがまずおかしい。     
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