二章 一幕 文明開化の音がする

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 商売柄、算術は最低限、歌劇を見るにしろ接待をするにしろ識字もやはり必要なものなので、識字率は高い。  比べてヴァベラニアは農業大国。字は読み書き出来ずとも、治水から開墾、作物の育て方といった口伝で伝えて来られた素晴らしい技術がある。  其々の国が己の風土に合わせて発展してきたため、別段問題は無いように思う。と、言うのがナタリアの見解であった。 「ですので、普及率については問題は感じられません」 「そこは私もそう思う。問題はね、貴族諸侯なんだ」  先日の西の一件で露呈したが、平和にかまけて読み書きのできる貴族諸侯が領地を統治するには不勉強な部分が多いというのがシャイアの直面した問題である。  子供では無いのだから家庭教師をつけるなどというのは問題になるだろう。下手に口を挟めば、また妥当国王の理由になってしまう。 「私の統治になったせいかな、先代までは皆二十の後半、ひいては三十代での即位だったから……」  シャイアは十七、言われてみれば若すぎる国王だ。年齢だけを見て侮ればあしらわれるのはそろそろ貴族諸侯もわかって来ているはずだが、偏見とは根深いものである。     
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