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ここは直轄地の隣である。少しでも頭が働くならばもう少しお行儀よく遊蕩できていただろうに。
長椅子に玉座にかけるが如く堂々と腰掛けたシャイアの眉間が動く。
「ザナス、貴様は余にも鼻薬を嗅がせる気か?」
「いいえ、陛下、そのような積りは……」
さすがのナタリアも驚いた。この男はシャイアの欲しいものなど何一つ持っていないのに、取り込む気でいたのだ。自分が新しい文化に取り憑かれたように、シャイアも引き込んで仕舞えば良いと思ったらしい。
「では、殺すか?」
今度は殺そうとしたらしい。苦し紛れにも程があるが、確かに二人とも帯刀している。シャイアの眼は見逃さない、どんな微かな気配であっても。指が一本動く、それだけで大方の事を理解する千里眼からは逃れられない。
殺す、という言葉に後ろに控えているバルク達が気色ばむが、ナタリアが視線をやって抑える。
正常な判断力を失った人間の一人くらい、シャイアは捌けぬ程弱く無い。平時であっても実力はシャイアの方が上だろう。相手の太っているわけでは無いのに脂肪だらけの体を見ればすぐに分かる。
「西の主犯は殺したが、此度は貴様が耽溺するまで気付かなかった余にも不足があった。因って生かす。働いて毒を抜くが良い」
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