1人が本棚に入れています
本棚に追加
守るべきはシャイアとナタリア、ザナスの身柄だと二人は意気込むが、位置取りが悪い。囲まれているというのはそれだけで不利だ。実力がどうあれ、守る戦いで数の不利は大きい。
奪い返して逃げられでもしたら、またシャイアを倒そうとする勢力が生まれることがわかる。
緊迫する空気の中、兵はじりじりと距離を詰めてくる。
「皆さま」
ナタリアの凛とした声が緊迫の中に落ちる。
「どうか少しだけ、目を瞑っていてくださいませ」
ナタリアの言葉にアッガーラは困惑するが、シャイアは迷わず敵地の、敵兵の真ん中で目を瞑ってみせた。椅子から立ち上がる事もしない。昼寝でもするような、あまりに悠然とした態度にアッガーラはぽかんとする。
「お早くお願いします」
ナタリアの声が氷のように冷たくなる。女王の威厳さえ漂わせる王妃の号令に押される形で、アッガーラの皆が目を瞑ると(アッガーラの一人が領主の目も塞いだ)悲鳴がきこえた。
「ぎゃあ!」
「ぐぁっ?!」
「かっは……!」
いつ王妃の悲鳴が聞こえるかと身構えていたが、一向にきこえない。野太い男の悲鳴が響く度、血の匂いが鼻に、肉を割く音が耳に届く。
寸間もしないうちにみるみる悲鳴の数が消え、ピチャ、と濡れた床を歩く音がする。
「終わりましたよ。目を開けてください」
バルクが目を開くと、そこには。
最初のコメントを投稿しよう!