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結婚式の日から分かっていた事だ。彼女は『私の味方』であると。それだけは分かっていたし、それ以外は分からなかった。
(ようやく、色々と知っていけている……)
眠気がシャイアの上に降りてくる。時は既に深夜、夜更かしをした部類である。
(ナタリア……)
口付けた時の震えた肩を思い出す。柔らかな唇に、顔を離した時の真っ赤な頬。手を組んでお祈りするように、奇跡に感謝するように、彼女はシャイアを見ていた。
そうしてシャイアは夢を見る。
それは一匹の大蛇。壁のような嵩の胴を持ち、尾が見えない程巨大な一匹の蛇。烏の濡れ羽色をした光沢のある巨体。
シャイアの体に巻き付くが、絞め殺すような真似はしない。気持ちよさそうに蜷局を巻き、寛いでいる。
「ナタリア?」
そう問いかけると頭を寄せてきた。浅黄色に光る眼はシャイアの掌程もあるだろうか。鱗で覆われた自分の額を嬉しそうに擦り付けてくる。
(可愛い……)
そっと額に口付けてやる。そのまま心地よい姿勢で蛇に抱かれるまま、シャイアは朝を迎えるまでゆっくりと眠った。
この大蛇の牙も毒も私には向かない、そうシャイアは知っていた。
ブランデへ帰るために、馬車をもう一台購入した。ザナス辺境伯を護送するための馬車だ。
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