二章 五幕 帰還報告

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 二人が略式の礼をし帰って行くと、シャイアは視線で、ロダスに席を外すように、と伝える。ロダスは小さな溜息を吐いた。分かりました、と渋々部屋を出ていくが、仲間外れにされる事が多くなってきていると感じているのだろう。実際、ロダスにはどうだろうか、とナタリアに打診もしてみたのだが、ナタリア曰く『あの方は陛下の味方です。身近に毒虫を飼う事を良くは思われないでしょう』と言う事だった。  と、なると後はやはりアッガーラと話を付けるのが先である。 「さて、バルク殿」 「国王陛下、間違っても王妃様を俺にけしかけないでくださいよ。悪いが今も精いっぱい腰を叱って逃げ出さないようにするので精いっぱいなんでさ」  四十絡みの男が二十にも満たない女に怯えるとはそれこそ情けないのだが、アッガーラは実力主義である。王妃の実力をそのまま認めたとなれば恐ろしくもなるというものだろうとシャイアは苦くも飲み込んだ。ナタリアはいつも通りの無表情である。そこには悲しいとか辛いという感情は一切伺えない。これは、覚悟していたという事だろう。 「シャイア様、あの技を見て尚こうして対面してくださるだけでも充分なのです。バルク様、心より感謝申し上げます。私の正体はお察しの通り暗殺者、密偵、といった事をこなす御庭番です。行者、と我々は自称します」 「我々?」  バルクのこめかみがぴくりと動く。こんな末恐ろしいものがまだ居るのか、という事だろう。 「はい。――これから聞く事を御内密にしていただけるのでしたら、私から全てをお話させていただきます。いかがですか?」     
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