二章 六幕 アッガーラの誇り

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 そうして壊れたように笑いだしてしまった。シャイアが慌てて腰を浮かせかけるが、バルクはそれを片手で制す。意識はあるようだ。 「あぁ、いや、まったくその通り。王妃様方には我々のようなもんにゃ到底かなわない実力をお持ちです。そんな怖い事を言って脅さなくても大丈夫ですぜ王妃陛下。我々アッガーラの始まりはならず者の集まりでしたが、約束は違えません。アッガーラとして名を明かし、国王陛下に信を置いた以上、それが毒でも薬でも皿毎飲み干して見せましょう」  笑いを収めたバルクは胸を張って言い切った。それは戦士の近い、一民族を表する者の誇りの表れである。 「それに、黙っていてもらった恩義もございますし……」  シャイアには聞き取れるか聞き取れないか程の声量で、しかしナタリアには確りと聞こえる声でバルクが呟く。  ナタリアは最初から、それこそオペラ領に居る頃から、アッガーラの存在を知っていた。西の山賊騒ぎの時にも、アッガーラの村が近くにある事を理解していて斥候に侍女を混ぜた。  彼らは知られる事を酷く嫌がる。必ず脱走者を捕獲する事は当然、自分たちの姿を見ながら逃げ出した人間を追わない筈がない。そう見込んでの作戦だったが、ここまで話せばバルクにも分かったのであろう。     
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