二章 六幕 アッガーラの誇り

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「私もバルク殿をバルク殿と呼んでいる以上、これ以上は仕方無いな」  交渉成立。ナタリアは不思議そうに黙ってみていたが、殿方とは所謂こういうものなのだろう、と思って黙っていた。 「そして、二つ目なのだが。……バルク殿もお察しの通り、この国は今どこから内乱の手が挙がってもおかしくない状況だ」 「一見平和に見えますが、立て続けに事が起こりすぎちゃあいますね」  シャイアは頷くと、改まって真剣な目をバルクに向けた。 「ここでアッガーラとの同盟をお願いしたい」 「同盟、ですか」  バルクは考える。正直に言えば、悪くはない話だ。しかし、身の内に毒虫が居るのはともかく、足元が燃えている相手の手を取ってしまえば自身が燃えるのも必須。火の粉が降りかかるどころか火が燃え移る相手との同盟は、正直言って組めない。  それでも一瞬悪くない話だと思うのは、この肥沃な国土にある。危険を承知で手を組み、平定の暁にはこの国土から排出される食糧や生産物を安く買い付ける事も夢ではない。アッガーラは狩猟民族だが、アッガーの教えの元に獲物を狩りつくす事はしない。増える人口に伴って、子供には新しい道をヴァベラニア王国で見つけてやれるのかもしれない。     
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