二章 六幕 アッガーラの誇り

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「将来的に見れば悪い話では無いと私は思う。ただ、今は自分の身が身中の虫に食われているのも確か。この手を取らぬのも致し方ないと分かっている」  それでも躊躇いなく、シャイアは右手を差し出した。  アッガーラは味方をしてくれている。それは分かる。こうしてその場だけならば雇って力を借りる事も可能だ。シャイアが求めているのはその一歩先の話である。 「シャイア殿、これは俺一人の裁量でどうこうしていい問題じゃねぇ。そこは分かってくれますか」  バルクはシャイアに負けず劣らずな真剣な目を向けて語る。西の次は南、この後は一体何が待っているというのか。それを理解せずに燃える相手の手を取るべきか、否か……、議決で全てを決めるアッガーラの元首たれど、それは勝手に決めて良い事ではない。  シャイアは右手を収めて苦笑した。 「相分かった。この場の勢いでどうか、と思ったのは私が悪い。バルク殿、できれば前向きに検討して欲しい」 「シャイア殿も分かっている事だとは思うんですが、敢えて言わせてもらえば、せめて敵が何なのか位は把握しておいてほしいものですね。今の貴方は五里霧中の中でその上背水の陣だ。国のどこから火の手があがるか分からない、それじゃあいけません。敵を知る、せめてその位は頼みます。でなきゃ決議に掛ける前に蹴られちまう」 「ふぅむ、そう来たか……」     
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