二章 六幕 アッガーラの誇り

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 その火の手がどこからあがるか分からないからこそ、どこでも対応できる領土を持つアッガーラとの同盟を結びたかったのだが、致し方ない。  シャイアはナタリアを見る。彼女も何か深く考えているようだが、すぐに答えは出せないと首を横に振った。 「分かった。では敵を捕捉する、それが出来たときにはアッガーラで同盟の決議を取る。こういう事でよいだろうか?」 「いいですぜ、シャイア殿。話が分かる御仁はアッガーラの好む所です、無駄が嫌いなんでね」  この日の交渉は目に見える成果は得られなかったが、シャイアにとっては収穫があった。  彼は王である。自分が進むべき道を見つけ、決め、歩まねばならない。  それがどうだろう、対等な者の見地から、目的を与えられた。こうして道を絞られる事は危険であり、それでいて何と有難い事だろう。 「私は得難い友を得た」  シャイアは満足そうに破顔してバルクに告げる。屈託なく右手を差し出す。  一瞬瞠目したバルクは、くしゃりと笑って今度こそその手を取った。  同盟ではなく友情、今はその不確かなつながりでも良いだろう。これは、決議にかけるまでも無い事だ。
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