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二章 七幕 来訪の予兆
「オペラ伯爵からの文が届きました」
晩餐の席でナタリアが淡々と告げると、シャイアは目を丸くした。
「義父上から? またどうしたの」
ナタリアは小さく溜息を吐いた。無表情は変わらないが、疎ましく思っているようだ。
「此方に来たい、と……」
「はっはぁ……」
彼女の様子からただ来たいというわけではない事を察したシャイアは、暫く考え込む。
要はナタリアがオペラ伯爵の秘密を明かしていないか、明かしていた場合はどうするかを決めに来るのだろう。十中八九明かしている事は最早分かっているのだろうとナタリアの様子から察し、その場合どう出てくるかについてをナタリアは思い悩んでいる。そこまで考えて、うん、とシャイアは頷いた。
「そうさな……痛くもない腹を探られるのは、些か尻の収まりが悪い。招待しよう」
「良いのですか?」
痛くもない腹、と言い切ったシャイアに、ナタリアは驚いて反射的に聞き返してしまう。
何方かと言えば痛いばかりの腹だろうに、本当に良いのか、と尋ねたのだが、シャイアはにっこりと笑って話をそらした。ここはナタリアの秘密を知らない者の耳目がある。
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