二章 一幕 文明開化の音がする

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 受け入れ先としてアッガーラが大きな組織となってきているのも、近年の山賊被害の減少に一躍買っている。有難い事だが、そこもいずれ自国で解決できないものか……、と広がりそうになった思考を止めて目の前の問題について話す。 「今はヴァベラニアにとって文明開化の時だ。この時代の流れには逆らえないし止める気も無いが、新しいものというのは必ず問題を伴う。今回の問題の根幹はそこにあると思うんだよ」  物体が無い物の価値、というのをヴァベラニア王国民は未だ知らない。無知な赤子に飴を与えて金貨を巻き上げる真似をする者も中にはいる。 「シャイア様がパパーンと法を作って、パパーンと利率を下げさせ、今の取立て分もお下げになる事はできませんの?」  身振り手振りを添えたナタリアが無表情のまま言い出すものだから、シャイアは横を向いて噴き出した。ひとしきり震えながら笑いの波が去るのを待つと、咳払いを一つ、ナタリアに向き直る。 「やぁ、うん、それもいいんだけど、それをしてしまうのはちょっとね……、子供の借金を親が肩代わりしたところで、また同じことが起きるだけさ。今度は法の元に、どうせ抜け目は幾らでもある」 「ソロニア帝国でも借金をする者に関しては誰も手出しは致しませんでしたわ。下手に関われば自分が使ったでもない金で損をする。国が手出しをすればきりがない。自業自得、と言う言葉がここまで当てはまる問題もございませんわね」     
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