二章 一幕 文明開化の音がする

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「律する側の貴族がこの調子では困るんだ。貸金屋が無くなっていいとは思わないよ、誰にだってお金がない時にどうしても必要になる事はあるのだから。適切な利率に法を整備するのは進めるとして……だから、問題は『現在』に絞ろう」  シャイアが広大だった問題点を絞ると、ナタリアは早かった。 「ならば詳細な実情を知らなければなりませんね……、カレン」 「心得ました」  カレンが応じてそっと部屋を出る。馬車で三日の南へと彼女の脚で今から走れば、大方明日の夕方には着く算段だ。調査も含めて約五日という所だろうか。 「後は報告を待ちましょう、シャイア様」 「……問題がはっきりしただけでも充分だったんだけどなぁ。私の部下の活躍のしどころが悉く無くなっていく気がするよ」  優雅に紅茶を口に運ぶナタリアを見てシャイアは苦笑するも、ナタリアは首を横に振る。 「油断大敵です。因循姑息になる事はいけませんが、使えるものは最大限使っていきましょう。こちらの草の皆さまにもお仕事は山とあるはずです」 「確かに。問題を見つけて来てくれるのは彼らだものね」  反省しました、と頭を下げるシャイアにナタリアは固まっている表情筋を動かして微笑む。 「上が働きを分かってくれているというのは、思った以上に嬉しいものですのよ、シャイア様」  それを聞いたニシナがそっと笑う。それは、まさしく我々が技を振るう理由の一つであるのだから、と。     
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