10人が本棚に入れています
本棚に追加
勇敢なのか馬鹿なのか分からない友人を待ちながら、ふと人混みの中に目を向けると――いた。手汗が止まらなくなり、胸が熱くなる。駄目だと分かっているのに気持ちを抑えられない。何色とも言い難いぐるぐるした感情が心を支配する中、彼女が僕に気づいた。
「あれ?どうしたの?いつも購買部で買わないのに……。お弁当忘れたの?」
怪訝な顔をして近づいてきた。
「……青子。……いや、友人の付き添い。」
「だよねー。忘れてるはずないもん。」
屈託ない笑顔を浮かべながら青子は僕の肩を軽くつつく。つつかれた右肩が熱くなる。僕はいよいよ変態だ。
「そういえば、もうすぐ夏休みだよね。せっかくだし海にでも行かない?高校生になってから、まだ一度も行ってないよね。」
「あぁ、そうだな……。期末テストも終わったし、羽を伸ばすか。」
「そう来なくっちゃ!何なら友達とか誘っていいよ?せっかくだし私も誰か誘おうかなー。二人じゃつまんないもんね。」
「……あぁ。」
二人きりで海という淡い期待は無残に打ち砕かれた。そうだよな。年頃の女の子が男と二人で行くはずがない。こういうのってすぐに噂になるし。
「それじゃ、約束よ?」
去り際に手を振りながら人混みの中へ戻って行った。僕は深呼吸をした。あまりにドキドキして満足に呼吸できなかった。
「待たせたな!……って、お前なんか顔赤いぞ?具合悪ぃの?」
「な、何でもない!早く食べよう。」
最初のコメントを投稿しよう!