10人が本棚に入れています
本棚に追加
「……い。お……。おい!青野!」
「へっ?」
「何ボーッとしてんだよ。さっきから呼んでんだろ?」
「あぁ……ごめん。何でもない。」
親友の呆れた顔を見て、空の彼方へ飛んでいた意識を戻す。気がつけば四時間目が終わり、教室は昼休みの喧騒に包まれていた。
「……で?何?」
「何?じゃねぇよ。もう授業終わってんぞ。早く昼行こうぜ!購買のパン売り切れちまう。」
「はいはい。」
机の上の教科書やノートやらを片付け、昇降口近くにある購買部へ向かう。
購買部に着くと既に大混雑していた。この中を分け入って行くと思うと気が重い。やる気満々で進んでいくのを尻目に、僕は少し離れたところで物思いに耽る。
僕がボッーとしていたのはとある人を見ていたから。こう言うとストーカーみたいだが、事実それに近い。校庭で走っている姿をつい目で追いかけてしまう。それは校内ですれ違う瞬間も同じ。彼女の姿を見かけるたびに追ってしまうのだ。僕は病気だと自覚している。――病名は"恋煩い"。分かってる。
最初のコメントを投稿しよう!