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「……い。お……。おい!青野!」
「……へ?」
「何ボッーとしてんだよ。さっきから呼んでるだろ?」
「あぁ、ごめん……。」
展開していた妄想を圧縮して小さくする。僕は青子がいる前で何てことを考えているんだ。軽く頭を振り、意識を戻す。
「で?何?」
「ったく……。聞いてなかったのかぁ?昼も食い終わったし、自由行動しようぜって話。俺とこいつはもうひと泳ぎするつもりだけど、青子が向こうの岩場に行きたいって言うからさ。お前、一緒に行けよ。」
「え!僕?」
「お前女の子を一人にするつもりかよ!いくらお前らだからって放っておくなよ?それじゃあ五時にまた集合な!」
言葉を挟む余地もなく、早口で捲し立てて青子の友達と海へ走って行った。というかこの展開、妄想とそっくりだ。……まさかとは思ったが、すぐに頭に浮かんだ考えを打ち消して平常心を保つ。――まさか、ね。
手招きする青子の眩しい笑顔を見て、僕の思考はすぐに現実に切り替わった。海は変わらず銀色に煌めいていた。
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