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『私でいいなら貴女を抱いてあげる。滅茶苦茶にぐちゃぐちゃに・・・。貴女は『鳥籠の中の金魚』のように無力で愛らしい』
鳥籠の中の・・・金魚?
水槽の中の金魚ではなく?
なぜ?
・・・ああ。
そうか・・・。
そう言うことか・・・。
『貴女は・・・私の苦しむ姿が見たいのですね?』
私のその言葉に鳥籠の中の紅い姫君はニコリと綻んだ。
それは美しく冷たく愛らしく儚くおぞましく・・・。
《鳥籠の中の紅い姫君は死を呼ぶ》。
そうだ・・・。
そう巷で聞いたことがある。
その『死を呼ぶ』恐ろしい妖が今、まさに私の目の前に居る・・・。
金魚は水がなければ生きられない。
故に水を湛えることのできない鳥籠の中では到底、生きられない。
僅かな時を鳥籠の中で無様に跳ね回り死んでしまう。
それがオチだ。
嗚呼・・・なんて無力だ。
その無意味に足掻き苦しむ姿をこの人は・・・鳥籠の中の紅い姫君は『愛らしい』と言って見たがっている・・・。
私に『鳥籠の中の金魚』になれと・・・。
『貴女がそれを望むのなら私は喜んでそう致しましょう』
そう答えた私の唇にまた触れるものがあった。
それは獰猛で荒々しく乱暴だった・・・。
鳥籠の中の紅い姫君は花のように儚く、見たものの心を捕らえて離さない美しい残忍な死神姫だと思いながら私は与えられる快楽に溺れていってしまっていた。
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