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「アンタは能天気でいいわね。紅姫」
刺を含ませ、冷ややかな視線を投げ掛けたつもりだった。
なのにその女はまだ笑っていた・・・。
綻び咲く可憐な花のように美しく・・・儚く・・・おぞましく・・・。
「・・・何がそんなに可笑しいんだい? 此処は鳥籠の中なのに・・・」
そう言った私の苛立ちは絶頂に達しようとしていた。
それをその女は知りながらまだ笑う・・・。
それは私を煽り、馬鹿にし、哀れみ、慰めるかのように・・・。
どれにしたって気に食わない。
この女は一体、どれだけ私の心の内を掻き乱せば気が済むのか・・・。
そう思った頃にはもう遅かった・・・。
「黒姫姉さん!!」
名前も覚えていない格下の女郎が乾いた音と共に悲鳴のような声を上げ、顔を青くしていた。
そして、乾いた音を立てた私の右の掌はじーんと微かに痺れ、怒りに震えていた。
嗚呼・・・また、やってしまった・・・。
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