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毒。
「ただいま~・・・」
その柔らかく愛らしい愛しい人の声に私は掃除の手をはたりと止め、自然と溢れてくる笑みをそのままにそう声の聞こえてきた襖の方を振り返り、目を丸くしていた。
「紅姫さんっ!? その頬・・・どうされたんですか!?」
私はそう言い終わるよりも早くに慌てて立ち上がり、襖を閉められながら『ん~?』と呑気な声を漏らされている紅姫さんへと駆け寄った。
駆け寄り、近くで見ると紅姫さんの左頬ははっきりと赤く腫れ上がり、左の唇の端からは血も滲んで出てきてしまっていた。
「と、兎に角、座ってくださいっ!」
私は紅姫さんの小さな手を握り、その小さな手を引いて部屋の奥へと向かった。
「春、慌てすぎだよ? そんなに慌てなくても大丈・・・」
「大丈夫じゃないですっ!!」
そう言った私の声は悲鳴のようで怒声のようでもあった。
「・・・大丈夫じゃ・・・ないです・・・」
そう改めて言って紅姫さんを振り返り見ると紅姫さんは本当に驚かれたお顔をされていた・・・。
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