優しい夜

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 最初に彼がやって来たのは、おそらく偶然だったのだと思う。  私はまだ学生で、その日は暗い部屋でぼんやりしているうちに、眠ってしまっていた。  夜中にふと目を覚ますと、「あ、起きた」、という声が聞こえた。  部屋を見渡すと、窓の前に座り込んでこちらを見ている人影があった。それが彼だった。  見知らぬ他人が部屋に居る、という状況にもかかわらず、私は落ち着いていた。  眠気で意識がはっきりしなかった、だとか、そういうことではない。  ただ、彼は悪いものではない、と直感的に感じたのだ。彼の纏う雰囲気が、すっかり夜に溶け込んでいたからかもしれない。  「起こしちゃったかな。窓が開いてたから、少し様子を見に来たんだけど」 「……大丈夫」 「そう。それなら良かった。……隈が酷いよ、寝るならちゃんと横になった方が良い」 「うん。でも、もうしばらくこうしていたいから」 「……じゃあ、僕もしばらくここに居て良いかな」 「どうぞ」 そう言って、彼は私がそこでぼんやりとしている間、窓際にずっと座っていた。  やがて私が眠ろうという気になった時、私が横になるのを彼は黙って眺めていた。     
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