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瞳の青さを思い出す日
あの日父と来た海は、海水浴客でごった返していた。まだ小学校のころのことだ。
木くずやパリパリに乾いた海藻、角の取れたプラスチック片なんかが散らばった、何の変哲もない浜辺。海は濁っているし、水着の中には砂が入る。やたら上機嫌のお兄さんやお姉さん、声の大きな幼稚園ぐらいの子供のグループなどは、視界に入るだけでうんざりしたものだ。
あの頃、私はあまり海が好きではなかったのだと思う。
唯一好きだったのは、安っぽく見えて重量ばかりあるパラソルの下に寝そべって、空を見上げることだった。
周囲に公園も森もない住宅街のど真ん中に住んでいた私にとって、開けた場所で見る空は全く違うものに見えた。
四方八方どこを見てもずっと広がる青空。てっぺんは少し青みが強くて、どこまでも続いていそうだ。雲一つない快晴もいいけれど、ふわふわとした綿雲がいくつか浮かんでいるのもまたいい。
父が趣味のサーフィンをしている間、そうして空を眺めるのが楽しみだった。
「hey」
突然声をかけられたのは、そんな時だった。
どうやら私と同じくらいの年の少年が話しかけてきたようだ。
太陽の強い光に照らされてほとんど真っ白に見える、繊細な金色の巻き毛。そばかすがうっすらと浮かぶ白い肌。そして何より、群青色にも見える濃い青色の、まん丸の瞳。
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