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「でも……俺は嫌だ。好きなやつを母親と共有するなんて、どう考えても普通じゃないし」
「光弦は常識人だよね。お母さんとは全然違う」
向き合って、薄い唇にそっと口づける。さらりと乾いた感触が頼りなげで、わずかに逃げる風情を見せた弟の肩を強くつかんで引き戻し、もう一度しっかり唇を合わせる。ためらいがちに開かれたすきまに舌先を滑り込ませると、軽く噛まれて追い出されてしまった。
キスをあきらめて離れると、光弦の目がまた恨みがましい色を帯びて僕を見ていた。
「遊ばれてる気がする……」
「そんなわけないだろ」
心外だけど、やっぱり言わないことは伝わらないか……僕は思い切って話すことにした。
「僕が大学に進んだのは、光弦と2人で生きてく力を得るためだよ。成人したら起業するつもりで準備してる。それで、収入が安定したら、この家を出る。光弦も連れていくから」
誰にも秘密で進めてきた計画を打ち明けると、弟の目から大粒の涙がほろほろこぼれ落ちてきた。
「その時がくるまで待ってて」
ささやきかけると、弟は小刻みに肩を震わせた。
「兄さんを信じたい……でも、耐えられそうにない」
大切にあたためてきた未来の計画は、あと2年もあれば実現可能となる。だけど、今はまだ早過ぎる。失敗するリスクの方が高い。
「無理?」
愛しい人は真っ赤な目で僕を見つめて、うなずいた。
「そっか、わかった」
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