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「行ってらっしゃい、お母さん」
僕は笑みを浮かべて玄関まで付いていく。
「じゃあね、颯太」
うっとりした目で手を伸ばしかけた母だが、僕の背後に視線をずらすと、一瞬にして興ざめしたように手を引っ込めてプイと出て行った。
「糞ビッ〇が!」
汚い言葉を吐き捨て、弟の細い腕が背中から絡みついてくる。
「でも、俺も同じだよな……」
骨ばったその腕で痛いほど強く締め付けられると、僕は痺れるような興奮を感じる。
「同じじゃないよ」
肩越しに、弟の頭に手を伸ばし、優しく撫でて愛でてやる。
「光弦とのことは、僕の意思でもあるから」
「あいつとやるのも、兄さんの意思じゃないの?」
「違うよ」
ふり向くと、涙をにじませて僕を見つめる視線とぶつかった。
「断って家を追い出されたら、光弦と暮らせなくなる。他人の子なのに養ってもらってる恩もあるから、サービスみたいなものだよ」
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