4、

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 14歳の時には制服でよかったけど、19歳の今はフォーマルを着る必要がある。 「お若いのでシングルがよろしいかと」  紳士服売場の店員に勧められるがままに、サイズの合う黒いスーツとネクタイを買った。 「今日も暑くなるみたいだね」 「うん。俺は夏服だからまだいいけど、兄さんは見るからに暑そう」  光弦は少し笑った口元を隠すように、顔の前で薄い手のひらを広げた。  自宅前でタクシーを待つ僕たちを、近所の人がチラチラ見ている。立ち位置を少しずらし、光弦の姿を隠し気味にした。実の母親が死んだというのに、この弟はよく笑うから、あまり人目にさらしたくない。 「おじいちゃんたちは斎場に直行するって。なんか打ち合わせとか色々やってくれるみたい」 「助かるね。今回は僕の出番ないかな」 「いいよ、たまには楽して欲しいし」  光弦はじっと僕を見つめて言った。 「これからずっと俺のために生きてもらうんだから」  僕はかすかに微笑む。 「兄さん、もし俺から逃げたら警察に全部話すよ?」  うなずいて見せると、光弦は満足そうに白い歯を見せて笑った。 「笑い過ぎ」 「だって……嬉しくてさ」  ささやくような会話を交わし、光弦はうつむいて手で顔を隠し、僕はそんな彼の肩に手を置いて沈痛な表情をつくる。
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