残り香

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一瞬、柴崎さんの両手が私の背中にふれて離れる。 再びこわごわふれたその手は、私をぎゅっと抱きしめた。 「本当に、すまない」 いままで泣けなかった分を取り戻すかのように、涙はこぼれ落ち続ける。 ひたすら子供のように泣きじゃくる私を、柴崎さんは黙って抱きしめていてくれた。 泣きすぎてぼーっとなったあたまで、柴崎さんに縋りつく。 死神のくせに柴崎さんの身体は生者のように温かく、安心できた。 「……なんで、私のところに来たんですか」 来たのが柴崎さん以外の死神なら、私はあの世に逝けてたのだ。 もしお迎えは知り合いが、とかいう規則でもあるのなら勘弁して欲しい。 「おまえから目が離せなかったからに決まってるだろ。 あぶなっかしーからな、おまえは」 「……ひどい」 くいっと柴崎さんがブリッジを人差し指であげるのがなんか得意げに見える。 それが少しおかしくなってふふっと小さく笑いが漏れた。
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