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《あん?》
思わず振り返った巨大機械へ、敦也は勢いのままに怒鳴った。
「逃げる前に、その体を元に戻せよ!! その体は俺たちの仕事で……今まで作ってきた仕事や仕事道具が詰まった仕事場なんだ! それを、わけも分からずいきなり奪われて、黙って見過ごせるわけがないだろう!!」
《何だとぅ!?》
巨大機械は人間たちに向かって身構えた。
「あの」
首をすくめながらも手を挙げたのは社長だった。
「どういう事情かはわかりませんが、よければ、私どもの話もちょっと聞いていただけませんか。この金城くんが言ったとおり、会社や製品がなくなると、私たちもいろいろ困るんです。で、まさかとは思いますけど、今あなたが吸い着けたものを、元の形に戻せたりとかは……」
《そんなこと、できるに決まってんだろ!? だったら何なんだよ!? あいつら相手に機体なしで立ち向かえってか!? 俺だって、やっと取り戻した機体を、おまえらの都合で手放すわけにはいかねーんだよ!!》
「なら、作ってやる!!」
《えっ?》
巨大機械と社長たちが、同時に呆気にとられて敦也を見る。敦也も自分が口にした言葉に驚きつつ、口から出るままに言葉を続ける。
「俺たちが、おまえの体を作ってやる! 今すぐにはできなくても、必ずおまえに新しい機体をやる!! それなら文句ないだろう!?」
巨大機械は暫し無言になる。やがて、その機体が分解し、葦原製作所があった場所に飛んでいき、すべて元通りの形になる。
空中に残った青紫色の球体は、ゆっくりと落下し、地面に着く直前に、十三~四歳ほどの青紫色の髪の少年に姿を変える。
「……わかったよ。話だけなら聞いてやる」
ふてくされたように顔を背けた少年に、社長が頭を下げる。
「それは、ありがとうございます。あ、申し遅れました。私は、有限会社葦原製作所の社長で、葦原栄治。で、こちらが我が社の社員の皆さんと私の家族。あなたは……?」
「名前なんか、ねーよ。あー、最近は、何だか知らねえけど番号で呼ぶ奴が多いな。『三の三十一号』だ!」
「では、三の三十一号さん、まずは我が社へどうぞ。詳しいことはそちらでお話ししましょう」
唖然としたままの一同の前で、社長がどうやら話をまとめ、三の三十一号を会社の建物へと誘う。
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