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典夫にお姫様抱っこされながらお風呂場に向かいつつ、知矢は言った。
「ねー、お父さんとお母さん、帰ってきたらどうしよう?」
「大丈夫だろ。伯母さん家に行ってるから、きっと遅くなるはずだよ」
「今、このシーン見られたら、言い訳できないね?」
「そのときはちゃんと言うさ」
「え? な、なんて?」
「知矢をオレにくださいって」
「も、もうお兄ちゃんてば……」
知矢は兄が冗談を言っているのだと思った。だが。
「オレ、本気だよ、知矢。それくらいの覚悟はできてるから」
「お兄ちゃん……」
知矢は兄の胸の顔を押し付け、にじんでくる涙とともに応えた。
「……うれしい……」
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