パステルメイク・ワンスチェア

2/6
前へ
/6ページ
次へ
樹「心の中にたったひとつ椅子があるという話があるんだけど」 ほの花「ふぅん。醤油とって」 樹「はいどうぞ。そう、で、椅子。大切な人だけが座ることの出来る椅子。とっても素敵な椅子かもしれないし、ありふれた椅子かもしれない」 ほの花「うん」 樹「その椅子はひとつだけだけど、似たような椅子が無数にあるかも。その椅子に誰かが座っている? もしかしてボロボロかな。誰かの手紙だとか、アルバムだとかが乗っている? さぁあなたの椅子はどんな椅子? っていう」 ほの花「で、あんたの椅子は?」 樹「それは、自分では分からないこと。今日の玉子焼き神がかって美味しくない?」 ほの花「ん、美味しいよ。とってもね。焼き加減もちょうど。……玉子焼きに大根おろし添えるのってさー、一人だと面倒だからさ、しないんだけど」 樹「ああ、うん、わかるよ」 ほの花「たまにはいいよね。うん、嬉しかった、し、美味しかった」 樹「味噌汁とか面倒じゃない?」 ほの花「一人分ならインスタントの方が楽だと思う。うちはそうしてるかな」 樹「あと、そうだな、オムライスとか……、いつもケチャップライス余らせるから」 ほの花「ふーん……きちんと自炊してるんだねぇ」 樹「元々、嫌いではないから」 ほの花「……ああ、日替わりだ」 樹「うん?」 ほの花「椅子」 樹「まだその話し続いてたの」 ほの花「そっちから始めたんじゃん。で、あんたの椅子なんだけど。話し、続けていい?」 樹「どうぞ。麦茶ちょうだい」 ほの花「ん。あんたの、椅子は、日替わりだ」 樹「へぇ」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加