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樹「うん?」
ほの花「あたし、あんたの椅子をね、チョークの椅子って言おうと思ったの」
樹「……ふぅん」
ほの花「チョークで出来た椅子なんて、一晩中座ってたら折れるでしょう。だからあたし達は一晩であんたの椅子から立ち去る」
樹「うん」
ほの花「でもあたし達のスカートには、チョークの粉が真っ白く付いててなかなか消えることはないのでしょう。それじゃあ、ごちそうさま。朝ごはんもお茶もとても美味しかったです」
樹「どうも、お粗末さま。ばいばい」
ほの花「うん、ばいばい」
樹「また会えるかな」
ほの花「通勤で使ってるのって、あの電車なんでしょ?」
樹「うん」
ほの花「じゃあ会えるんじゃない。あたしもあの電車だし。ただ、まあ、」
樹「もう一緒に寝ることなんてないって?」
ほの花「うん。一晩であたしは充分。だってあんた、今夜にはまた違う女の子をベッドに誘うんでしょ」
樹「うん」
ほの花「あたしは無理かなぁ。ていうか、べつにあんたのこと好きでもないんだった。忘れてた」
樹「忘れてた?」
ほの花「あんまり、話さないようなことをたくさん話したものだから、仕方ない。彼氏とこんな話しなんてしたことないし」
樹「彼氏いんの?」
ほの花「一昨日ふられた。ああ、どう? 口説いてみる? ふられたばっかりの女なんて、簡単に口説けるでしょう?」
樹「考えてみようかな」
ほの花「あんた、見てくれだけはいいんだから、あんまりそんなこと言わない方がいいと思う。勘違いされるよ」
樹「勘違いしてくれた?」
ほの花「まさか。鳥肌立った」
樹「ぞわぞわした?」
ほの花「そうね。もちろん悪い意味で」
樹「嫌われたなぁ」
ほの花「嫌ってるわけじゃないけど。正直言うと、なんていうか、すごーく警戒してるの」
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