真夜中に振り向くアイツ

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真夜中に振り向くアイツ

「相変わらず忙しいのか?」 「ああ、それなりにね」  木村の問いに、僕が答える。僕たちは、大学時代からの親友。今日はお互い、いいタイミングで連絡が取れて、会社帰りにいつもの駅で落ち合った。行きつけの焼き鳥屋に入り、生中と適当なつまみを注文する。  お互いの女関係の近況を話題にしながら、生中は二杯目に突入。店内に流れる懐かしい曲に触発されて、学生時代の思い出が入り混じるたわいのない会話をする。 「最近さ、妙に怖い夢見たんだよね」  木村の切り出した話に、僕は相槌を打つこともなくジョッキを持ち上げる。木村もジョッキに残った生をぐいと流し込む。 「突然夜中に目が覚めてさ、辺りを見回すと真っ暗なんだ」 「なに? 夢の話?」  軽く頷きながら、話を続ける木村。 「時計を見ると深夜二時なわけ。で、気がつくと隣に女が寝てんだよ」 「へぇ。いいじゃん。あ、生中もう二つ」  焼き鳥の盛り合わせを持ってやって来た店員に、ジョッキを掲げて同じものを注文する。 「まあな。悪くないよな。でさ、別に疑問も思うことなくまた寝ようとするんだけどさ」 「寝んなよ。夢ん中だろ?」  僕は、焼き鳥を串からほぐしながら、ツッコミを入れる。     
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