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「そういう不条理性が夢ん中ってことだ。もっとも夢だって気付いてたら、いろいろするんだけどよ」
「で、隣に寝てた女は、さっき言ってた同僚のなんとかちゃんなのか?」
「それが、背中向けてて、誰だかわかんねえんだよ。でも……、なんかわかるんだよね。アイツだって……」
アイツ。アイツって、あの子のことだ。そう躊躇なく話題に出せるのは、僕と木村が親友だからであり、数年の歳月が僕たちの心を癒してくれたからでもある。
「なんだよ。夢に出てくるなんて反則だろ。アイツはお前にとって最高の女性なんだから」
「そうなんだよ」
ほぐした焼き鳥に七味を振りかけながら、話を続ける木村。
「で、俺はその隣で背を向けて寝てる女の髪とかを撫でるわけよ」
僕は黙ったまま、焼き鳥を頬張る。
「そして、後ろからこう、くッと抱きしめるんだな」
焼き鳥を頬張りつつ、片手で自分の肩を抱く木村。僕は何も言わずに、ジョッキを傾けて生を喉に流し込む。
「そこで、なんか違和感に気付くんだよ……。ドキッとして、少し離れて見てるとさ……」
ちょうどやって来た店員が、追加の生中二杯を置いて、空いたジョッキを持っていく。
「ねぇ……。って言うんだ。その女が」
僕から角度をつけて、体を横に向ける木村。
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